2010年03月05日

カンガルーケア

お久しぶりです。
コンピュータが壊れて以来、ブログ更新が滞っていました。
もう3月になってしまいました。

本日朝、インターネットニュースを見て、長崎市の病院でカンガルーケアで新生児が脳性まひになったというニュースをみて、ショックをうけました。
弁護するわけではないですが、その先生は私もよく知っていて、勉強熱心な先生でもあり、患者さんにも評判のいい病院です。そこで、このようなことがあったのに、大変ショックを受けています。

カンガルーケアについては、以前からその功罪が取りざたされていました。当院でもバースプランのときに助産師から話があると思いますが、希望の方には実施しています。しかし、いままで本格的なカンガルーケアは数例の方のみでした(出産直後に新生児をお母さんに抱っこしてもらうことはしますが、その後は児の観察、計測のためいったんあずかって、状態が落ち着いていれば、お母さんのもとに戻すようにしています)
カンガルーケアの問題点については、以下の情報を参考にされて下さい。
http://tyama7.blog.ocn.ne.jp/obgyn/2009/06/post_d6f6-1.html

これは、今の産婦人科の問題点の象徴でもあると思われます。
産科医療、とくに開業医では、“はやり”を取り入れていかないと、なかなか妊婦さんにアピールすることができません。

少し前には、“うつぶせ寝”が流行りました。これは、赤ちゃんの頭の形を良くするとか、喚起効率が良くなるといった理由で、流行ったものです。しかし、窒息する新生児の報告が出て以来、危険なものであると認識され、現在はごく限られた病院以外では、行われていないようです。

そのほか、流行りものとしては、豪華な食事、自然派施行、母乳育児、アロマ、母児同室などなど、たくさんのものがあります。

どれも一概に悪いとは言えないものですが、必要かといわれると、“サービス”といわれるものでそうでないものもたくさんあります。
すべて、功罪があるということです。
ゆえに、その功罪については、医療者、患者側も十分に理解したうえで、実施することが必要と思うのです。


当院で行っている流行り”のものを例にあげると・・・。

豪華な食事、これは、妊婦さんにとっては、目玉の一つですが、あまり、カロリーをとりすぎると、おっぱいが異常にはって、乳腺炎の原因になりかねません。


母児同室、これは、お母さんが家に帰って、育児をするのには、きわめて重要な経験です。病院にいるからこそ、スタッフのお手伝いができますが、家では一人になるとどうしていいか分からなくなるお母さんがたまにいらっしゃいます。しかし、せめてお産後だけでもゆっくりすごしたい、とおっしゃるお母さん方もいらっしゃいます。母児同室は、赤ちゃんのお母さんに預けるので、ともすればスタッフが不親切であると思われがちです。

母乳育児・・・。
私も基本的には賛成です。実際当院でも母乳保育を積極的に勧めています。
しかし、それに固執するあまり、新生児の体重増加不良や、低血糖を引き起こしたり、お母さんの精神的負担を助長したりすることもあります。私の母親の世代、つまり、私が育った昭和40年代はミルク全盛の世代です。それが、現在では母乳育児が主流となっています。決して悪事ではない(いいことであると)思いますが、私が思うに、これもはやりすたりの範疇ではないかと思います。もし、母乳育児にこだわるあまり、低血糖や発育不全を起こす児が出てくれば、また、ミルク世代に戻ってしまうことも、十分に考えられるからです。

アロマテラピーやマッサージ
これは、うまくリラックスできるかたもおられますが、効果が人によってさまざまで、不十分な方もいらっしゃいます。

産科はサービス業と思われている方も多いかと思います。妊婦さんの満足度、それは重要視されるべきことではありますが、基本は“医療”です。安全が担保されなければ、すべてのサービスは“無”になってしまいます。故に、臨機応変に対応していくことが肝要だと思います。
それには、しっかりした“管理”が必要と思います。これは、自然派志向の現在の風潮とは、逆行するものと思いますが、その“管理”されたなかで、できるサービスを模索するのが、肝要なことではないかと個人的には考えています。

フリースタイルのお産を当院でもしていますが、フリースタイルの難点は胎児のモニターがどうしても不十分であるときがあることです。そこで、リスクのあるものはどうにか早めにピックアップして管理すること、もし順調であれば、そのままフリースタイルへ、そうでなければ管理下のお産をすることが必要であろうかと思います。

以上のものは、当院で行っているもので、より安全に快適にすごしていただけるよう、スタッフがいろいろ考え、勉強し、食事の管理もスタッフ全員で意見を出し合って、行っているものですので、安心してお受けいただいて結構です。もし、わからないこと、疑問なことがあれば、遠慮なくスタッフに尋ねてみてください。
手前みそですが、私は、当院のスタッフには、自信をもっています。

産科には予期せぬトラブルは、起こるものです。しかし、10,000のうち1でもあると、不幸になります。起こらないように努力、研鑽していくことが必要だと感じました。なぜなら、その子はもちろん、そのご家族、医療者すべてが不幸になることだからです・・。
posted by 池田産科−YOU−婦人科医院 at 11:28| Comment(2) | TrackBack(1) | 医学情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日,長崎新聞の記事とNCCのニュースでこの出来事を見聞きしました。
ニュース映像を見る限り,私たち夫婦が一度だけかかったことの某産婦人科と思われました。

妻の最終月経開始日から約1か月半ほどたったある深夜,妻がいままで見たこともない痛がり方をしました(結果的に,流産による痛みでした。)。
翌日,私たちは「流産したかも知れない」との不安を抱えて某院にかかりました。
事前問診票には,「妊娠の可能性」という項目に敢えて○を付けず,それまでの数日の経過を記入しました。
しかし,院長氏は,私たちが診察室に入るや,私たちに「どうしましたか?」と尋ねることもなく,「おめでとうございます,妊娠です。出産予定日は○月×日です。」とエコー写真のサンプルを見せつけられました。
このサンプルを見せられた私たちが,どれだけ暗い気持ちにさせられたか,容易にご想像いただけると思います。
そして,患者・来院者の気持ちに寄り添おうとしないこの病院には,妻と子どもは任せられない,との思いを強くしました。

ニュース映像だけでは必ずしも断定できませんが,
仮に,カンガルーケアで事故を起こした病院と,私たちのかかった病院が同じ病院であれば,
当然に起こるべくして起こった事故であると受け取ります。

こういったニュースでは,病院の名前が伏せられることが多いです。
しかし,こういったことをしでかした病院がどこなのかが分からなければ,
私たち子を望む夫婦は,どの病院だったら安心して子どもの命を預けられるのか,不安を抱えたままになってしまいます。
今回の記事が匿名報道だったことが,きわめて残念です。
Posted by ごんべえ at 2010年04月27日 10:32
>ごんべえさん
コメントありがとうございます。
言葉の難しさを感じます。
私は逆に、妊娠が判明しても、10週位までは流産する可能性が、それ以降よりも高いので、流産、子宮外妊娠も含め話をするようにしています。しかし、折角妊娠で喜んでおられる矢先にそういう話をすると、気分を害される方がおられます。説明の難しさを感じています。
こういうコメントをいただくと、説明は慎重にすべしということを改めて、再認識させられます。
ありがとうございました。
Posted by イケドク at 2010年05月05日 12:37
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:


この記事へのトラックバック

カンガルーケアの危険性とは?
Excerpt: 詳しくは知らないんですけど、 カンガルーケアというのは出産後直ぐに母親に赤ちゃんを抱かせるといもので、その様子からカンガルーケアと呼んでいるんだそうです。 で、そのカンガルーケアですが、 出産後直..
Weblog: 無法痴態
Tracked: 2010-03-16 14:20